店長の小噺〜KUSHIDAのホバーボード〜

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2015年6月7日。代々木第2体育館は熱狂の渦が巻きおこっていた。

新日本プロレスのJr.ヘビー級戦士のリーグ戦「BEST OF SUPER Jr.」の優勝決定戦が開催されていたのだ。

日本、アメリカ、ドイツ、メキシコ。国際色豊かな選手達がSUPER Jr.の栄冠を手にする為に新日本プロレスのリングで約2週間に及ぶ期間、熱い戦いを繰り広げるまさにリアル超人オリンピックのような大会。

そもそもJr.ヘビー級のレスラーというのはプロレスラーとしては体格に恵まれていない。(もちろん一般人に比べれば全然デカい!)
だからこそ華麗な空中殺法であったりスピーディーな打撃・研鑽された関節技等、体格をカバーする光る物を皆1つは持っている。
体格に恵まれなくったって努力すれば強くなれる!
努力に裏打ちされた華麗な闘いは最早アーティスティックですらあるのだ。

話は代々木に戻る。
今年の優勝決定戦はKUSHIDA対カイル・オライリー
KUSHIDAは去年もSUPER Jr.決勝の舞台に立ち、惜しくも準優勝に終わったが将来を期待される新日本Jr.の次期エース候補。
対するカイル・オライリーはアメリカの団体ROHのレスラーで新日本プロレスのリングでは同じくROHのボビー・フィッシュと共にタッグ(2人1組で闘う試合形式)戦線で活躍している。

KUSHIDA対オライリー。正直カードが決まった時、決勝にしては少し弱いカードかなと思ってしまった。
「KUSHIDAは順当だとしても相手はオライリーか…実力者だけどシングルプレイヤーとしては印象無さすぎるよな…」
そんな風に思っていた。

しかしフタを開けてみたらオライリーは予想を遥かに超える強さだった。終始KUSHIDAを圧倒し続けた。
コーナー上でKUSHIDAの腕を極めてそのまま投げた時は本気でKUSHIDAが死んでしまうんじゃないかと心配になるほどだった。本当に鬼のような攻めだった。
「試合前あんな風に思ってゴメンよ…オライリー」
試合を観ながら僕はボソッと呟いた。

しかしそんな怒涛のオライリーの攻めをKUSHIDAは見事に耐え抜いた。
その姿には覚悟が見えた。
KUSHIDAのレスラーキャリアのスタートは新日本プロレスではない。
伝統ある新日本プロレスではいわゆる「生え抜き」ではないKUSHIDAのような選手がトップに立つのは非常に難しい。
まず生え抜きでないとファンからは最終的にはヨソから来た選手と見られてしまう傾向がある。
それを覆すには「結果と内容」両方を兼ね備えた闘いをし続けるしかない。
去年のSUPER Jr.以降KUSHIDAは「結果と内容」を出し続けてきた。
しかし1つの集大成の舞台である今年のSUPER Jr.これを落としてしまったら全ては水の泡になってしまう。
「絶対に負けられない!」
そんな覚悟を背負ったKUSHIDAの闘いは相手の技を受けきり真っ向から自分の技をぶつける。新日本プロレス伝統のストロングスタイルだった。
それと同時にプロレスラーに憧れた幼少時代、海外修行、ハッスル〜SMASH、彼のレスリングキャリアでなければ出来ないオンリーワンのKUSHIDAスタイルでもあった。
ケガで欠場中のパートナーであるアレックス・シェリーの必殺技スライス・ブレットを使った時にはKUSHIDAからシェリーへのエールのようにも見えたしシェリーがKUSHIDAに力を貸してくれたようにも見えた。

そして最後はKUSHIDAの必殺技ホバーボードロックがガッチリとオライリーの腕をとらえKUSHIDAが見事に優勝を手にした。
その時会場全体がガッツポーズしていた。あの瞬間生え抜きだとか生え抜きじゃないとかそんな事は関係なく会場にいた誰もが認めたであろう。
まぎれもなくKUSHIDAが新日本Jr.のエースであることを。
試合の後KUSHIDAは言っていた。
「どこから来たじゃなくどこに行くかが重要で、何をしたかじゃなくこれから何をするか。KUSHIDAが新日本Jr.を明るい未来へお連れします!」

KUSHIDAの必殺技ホバーボードロックは彼の大好きな映画「バックトゥザフューチャー」の中の未来の乗り物ホバーボードが名前の由来である。
ホバーボードに乗った新日本Jr.のエースがこれからどんな未来に行くのか目が離せない。きっと光り輝く明るい未来が待っているはずだ。



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